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第288話

「大丈夫、時間は君が決めていい。明日でも明後日でもいけるから」

弥生は少し考えた後、「とりあえず、あとにしましょう」と答えた。彼女は今、まさに二つの選択肢の間で揺れ動いていた。

「了解」と弘次はすぐに承諾した。

電話を切った後、弥生は再び店内に戻った。すると、古奈は既に自分なりに考えを整理したのか、弥生が入ってくるのを見て逃げることもなく、まっすぐ彼女を見つめて言った。

「さっきの話、もう少し自分でよく考えたいです」

弥生はその言葉に一瞬足を止め、しばらく考えた後に尋ねた。

「彼のことを諦めきれないの?」

古奈は苦笑した。

「じゃあお姉さんは、宮崎さんを諦められるのですか?私の気持ちを一番理解してくれるのは、お姉さんだと思います。私たちの状況は似ているから」

彼女が言っているのは、二人とも妊娠していて、彼のそばに他の女性がいるということだ。

その言葉を聞いて、弥生は微笑し、穏やかに答えた。

「私たちが同じ状況だと思う?」

「違いますか?」

「確かに、表面的には似ているように見えるわ。でも、年齢が違うって考えたことがないの?」

その言葉を聞いた古奈は一瞬戸惑い、自分の唇を噛みながら悩んでいる様子だった。

「お姉さん......」

古奈のその姿を見て、弥生は深いため息をついた。

「あなたにはまだこれからの未来があるの。迷わないで。今日はここまでにしましょう。そろそろ帰らないと、お母さんが心配するわよ」

古奈は仕方なく頷き、立ち上がって店を出ようとした。しかし、店のドアのところまで行ったところで、何かを思い出したように振り返り、弥生に駆け寄った。そして小声で質問した。

「ちょっと聞きたいことがあるんですけど......」

「何?」

「赤ちゃんを産むつもりですか?」

その質問に、弥生は少し考えた後、静かに頷いた。

「うん、産むわ」

その答えに、古奈は少し驚いた様子で、深く息を吸い込み、もう一つ、最も聞きたかった質問をした。

「じゃあ......宮崎さんとは離婚するつもりですか?」

この質問はまだ決定していないことであり、話すべきではないが、目の前の古奈を信じることにした弥生は、再び頷いた。

「ええ、そうするつもり」

彼女の答えは、一度目よりもさらに確信に満ちていた。

「赤ちゃんを産んで、自分で育てるわ」弥生の声は静か
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